むさ日記(仮)

南河内から見たいものを見ています。興味あること以外は興味ありません。

キハ85系でゆく高山本線の旅

 2023年早春、数年来の付き合いのあるS君から突如としてこんな連絡がきました。それは「特急ひだの特急券が余っているので名古屋→富山で乗らないか」というお話。聞けば3月改正で定期運用終了が決まっているキハ85系のグリーン席を購入したのに同行予定だった者の都合が付かなくなり余ってしまった、ということらしいのです。しかも聞けば特急券代をS君が出してくれる、というなんとも美味しいお話でした。いやこんな機会はおそらく二度とないだろう、ということで二つ返事で返答してしまいました。

 今回の旅程としては急遽である上、翌日に大阪に帰っておきたい事情がありましたので午前中に名古屋へ向かい、富山からの帰りは北陸新幹線サンダーバードを乗り継いで帰宅することとしました。

 そして迎えた2月18日土曜日、最寄りの南大阪線某駅から橿原神宮前経由で大和八木へ、八木8:29発の特急ひのとりに乗車して近鉄名古屋へと向かいます。地味にこれがひのとり初乗車。快適、というより安眠仕様すぎて気づいたら爆睡しておりました。6両とはいえ車内は満席でしたから、この列車の人気ぶりがよく分かるでしょう。名古屋市内で昼飯を食べた後、14時前に名駅の改札前にてS君と合流。コンビニに寄ってからホームに向かうこととしました。

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 というわけでやってきました、こちらが本日の主人公(?)ことひだ13号。このSDGsの時代に相応しいとは到底言い難い爆音をたてながら、7両編成のキハ85系名古屋のホームに入線してきます。本日の座席は10号車の1A席。そう、S君が10時打ちで購入したというパノラマグリーン席です。

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 座席は3列シートでリクライニング角も深くフットレスト付き。ウトウトと寝てしまいそうな座席ではありますが、前面展望を楽しむべく寝ないように頑張っていきたいところです。ちなみに車内は鉄道ファンとおぼしき方が大半。春改正後の富山直通は全列車モノクラスとの情報もありますが、こんな具合では仕方ないなぁという感じですね。

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 こうして14時48分に名古屋を発車。配線の関係上岐阜までは座席と反対方向に進むいわば「後面展望」といったところですね。この区間は複線ですれ違う列車も勿論多いので、名古屋方面に向かう列車をたくさん眺めることができました。

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 そして岐阜に15時6分に到着。そそくさと方向転換を行い、停車時間2分ほどで反対向き(というより座席通りの向き)で発車します。ここから高山本線の4時間近い旅がスタートします。

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 高山本線名物といえばこれ。他路線では一線スルーとして行われることの多い高速化ですが、この路線では蘇原など一部を除きこれが行われておらず、その代わりに110km/hでの通過に対応したY字分岐が多用されています。その為駅通過の際に横方向に揺れることが多いのがこの路線の特徴ですね。

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 坂祝ひだ12号行き違いのため運転停車。しかし対向列車が5分遅れとのことで長時間の停車になりました。結局美濃太田には7分遅れで到着しました。特急同士の交換駅では並びを撮影すべく多くの撮り鉄の方で賑わっており、引退するキハ85系への注目度の高さを感じました。

 美濃太田を出ると沿線に民家が少なくなり、一気に人気のない場所へと入っていきます。それにしてもとにかく鉄橋を渡る回数が多いのが高山本線。有名な第一飛騨川橋梁を筆頭に、なんと24回も飛騨川を渡る、という数の暴力を感じます。

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 鷲原信号場ではひだ14号との交換待ちで再び停車。新鋭HC85系との顔合わせとなりました。こちらにも撮り鉄の方が多く集まっているのが印象的でした。

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 少ヶ野信号場ではひだ16・36号との交換。こちらは対向列車が停車していたのでそのまま通過しました。そこから程なくして下呂に到着します。この間わずか1.8kmであり、この規模の路線にしては駅間距離が短い気もしますがこのように活用されている姿を見ると必要なのかなーと思ったり。いや、一番良いのは複線電化なのでしょうが。

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 その下呂を出ると列車はさらに山間に入っていきます。このあたりになると沿線にうっすらと雪が積もっているのが見えるようになります。この日は気温が高く雪にはなりませんでしたが、一気に「山間部」を実感する光景ですね。そしてではひだ18号との交換。こちらは貫通顔先頭のキハ85系での運転、ぶっちゃけこっちの顔の方が好きというのは僕とS君の総意。我々が少数派なのかもしれませんが。この駅では一旦停車後すぐに発車しました。

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 17時16分には3分遅れで高山に到着。ここで後4両(1-4号車)を切り離し3両編成となります。で、ここで興味深いのは高山から乗車の需要が割とあるということです。感覚的に名古屋から徐々に空いていく、といった姿を想像してしまいますが、北陸新幹線の開業によって、高山〜東京の所要時間が名古屋回り・富山回りで大差がないうえ、接続の時間次第では後者の方が速い場合がある、というのです。つい8年前まで北陸へは富山空港小松空港まで飛行機、あるいは越後湯沢で特急「はくたか」に乗り換えて向かうのが定番だったというのに、時代の変化は恐ろしいものです。

 この時間になると日が傾いてくるので写真はこの場所にて断念。一方乗務員さんによるのかもしれませんが、この日は先頭の展望窓は富山到着までカーテンを閉めずに運行してくださいました。

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 映画の聖地として知られる飛騨古川に停車したのち、打保ひだ20号交換のためまた運転停車。こちらはキハ85系による運行でした。この区間は急勾配が続く区間であり、台風被害で3年近く運休していたのも記憶に新しいでしょう。その対策として東海管内においては、落石防止用のフェンスが所々に設置されているのが目立ちます。(上の写真は別の区間です、ご容赦ください)

 18時16分、7分の遅れを取り戻して富山県最初の停車駅、猪谷に到着しました。ここからJR西日本の乗務員に交代となります。S君曰く「猪谷を境に保線の差が歴然となる」とのこと。別に西日本の悪口を長々と言うつもりはないですが、富山県内の赤字ローカル線に過ぎない高山北線は確かに体感的に揺れが多い気がします。

 そして18時54分、定刻通りに富山に到着。実は富山に来るのが10年以上ぶりであり、いつの間にか立派な高架駅が出来上がっていました。反対ホームにはあいの風521系が停車。こちらも国鉄型ばかりのイメージから一気に刷新されたように見えますね。

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 ここで関東在住のS君とは別れ、帰りは富山19:15発のはくたか571号サンダーバード48号を乗り継ぎ帰阪の途につきます。富山滞在時間はわずか21分でした。せめて富山らしいものを、とのことで名物駅弁・ますのすしを購入。常温なので2日後まで持つとのことでしたが、サンダーバードの車内でビール片手に美味しくいただきました。もっとも、ひだ乗車中眠気を堪えていた分途中から爆睡してしまいましたが。

 完全な余談とはなりますが、ダイヤの乱れることが多い湖西線JR京都線が遅れることを考慮し、終電ギリギリにならないよう帰りの列車は選択しました。ところが、時刻通り運行していたJRに対しこの日は珍しく南大阪線のダイヤが乱れており、阿部野橋からの帰宅に想定外の時間がかかってしまいました。世の中思いもしなかったことが起きるものですね。