長々と書いてきた東関東未乗路線ネタも4本建ての最終回である。大洗鹿島線に乗車したことで水戸を発着する路線に全て乗車した記念(?)として、関西に住んでいる以上しばらく行く機会も無さそうなひたちなか海浜鉄道にも乗車しておこう!と考えた、本当にそれだけの話を最後に書きこの話を締めくくろうと思う。
(参考:前回)
湊線の始発駅・勝田のひたちなか海浜鉄道の乗り場は常磐線上りホームと共有する1番線である。一度迷って改札を出てしまったが、有人改札で「湊線に乗車する」旨を伝え、やはり常磐線ホーム上にある窓口で1日乗車券を購入する。訪問時はキャンペーン中で600円であったが、普段でも1,000円なので往復をすればモトを取ることができる。
車両は新潟鐵工所のNDCことキハ37100形であった。車内は18.5m級ロングシートであり、とにかく長い座席が目立つ。譲渡車ではクロスシート車も多く在籍しているものの、乗車時間の短さを考慮すると自社発注車をロングシートにしたのも十二分に理解できる。
17時43分勝田発。車内は座席が埋まるほどの混雑、少し早いとはいえやはり帰宅ラッシュ時なのでガラガラではないようだ。一時は廃線の危機にもあったこの路線、三セク化以降利用者が増加傾向にあるようで一人の鉄道趣味人として非常に嬉しく感じる。
最初に降車があったのは金上、ここで対向列車のキハ11と交換する。ちなみにこの路線も大洗鹿島線と同じく前乗前降方式。なんとなく北海道のイメージが強いこの方式であるが、茨城では当たり前なのだろうか。勿論交通系ICカードは利用不可である。
17時57分那珂湊着。主要駅とあって1/3ほどの方がこの駅で下車される。写真は撮れなかったもののこの駅には車両基地が隣接されており、部品取り用のキハ11-200が城北線ステッカーを貼られたまま放置されていたのが妙に印象的であった。
そして残りの乗客は半分ほどが殿山で下車し、平磯で乗客はさらにその半分となる。この辺りは旧那珂湊市内の住宅街といった感じであろうか。車窓の風景は住宅地と田園風景が交互に現れる、といった移ろいを見せてゆく。
18時11分、終点の阿字ヶ浦着。ここまで乗ったのは私を含め5名ほどであった。この駅は無人駅であるが、なんと固定式ホーム柵が設置されている。非電化単線にホーム柵とは随分と不釣り合いに感じられるが、2021年に開校した統合新校・美乃浜学園へ通学する小中学生の安全対策だという。
この規模の路線としては異例ともあろうホーム柵が設置されたことは、「幼い命を預かる」というこの路線に与えられた使命を意味しているのだろう。鉄道は便利な乗り物である一方、その理由はさておき利用者の不注意で命を落とす可能性も否定できない乗り物である。もちろんホーム柵は万能ではないが、これから長く鉄道を利用してくれるであろう少年少女が安全に利用できるよう、鉄道会社として努力している証左と言えるのではないか。もちろん設置しただけで終わりではなく、これからも安全に運行を続けていって欲しいと願いたいところである。
ちなみにこの駅の一角には、2014年に引退したキハ222を祀った「ひたちなか開運鐵道神社」たるものが存在する。古レールで作られた鳥居の奥に現役時代無事故で50年以上走り続けた「御神体」が安置されており、さまざまなご利益があるのだという。建立時にはニュースにもなったが、なんともユニークな神社であろう。
さてすでに報道されているように、将来的に湊線は阿字ヶ浦からひたち海浜公園方面へと延伸することが発表されている。現在は少し伸びたところで線路が止まっているが、この先に高架線が伸び、既存区間でも快速列車の運転が検討されているという。一度は廃線の危機に陥った路線とは思えないほど明るいニュースが多いこの路線だが、延伸開業した折にはまた乗りに来たいところである。
阿字ヶ浦から勝田までは折り返しの列車で戻り、勝田からは常磐線の普通列車で上野に戻ることとした。E531系の普通列車は水戸発車時点では座席が埋まっていたが、石岡を出る頃には半分近くの方が下車され、そのガラガラのまま複々線区間に入り、ほどなくして上野の高いホームへと滑り込んだ。